
個室は自分だけの空間
繁華街の裏路地やターミナル駅の大通りから一歩入った雑居ビルにひっそりと佇む「個室ビデオ店」──中高年男性の間で人気が高まっているという。
「家族にバレる心配なく、堂々とDVDが観られる」(50代男性)といった“家庭の事情”だけが理由ではない。週に1回は通うという60代男性は少し照れながらこう話す。
「子供はとっくに家を出ているし、妻も習い事やサークル活動が忙しくてほとんど留守。家で1人でいる時間はたっぷりあるけど、つい足が向いちゃうんだよね」
好きなDVDを選び、個室で楽しめる。そんなシンプルな業態が、なぜ大人の男たちを惹きつけるのか。前出の60代男性が続ける。
「非日常的な空間というか、秘密基地みたいな感覚があるんですよ。狭い個室に必要なものが何でも揃っていて、座っていながらにして全てに手が届く。自分だけの場所で、たくさんある中から選んだDVDを好きなだけ楽しめるんです。個室ビデオ店は安いし、なんというか、“ほどよい背徳感”なんですよね。店がある雑居ビルに踏み込む時はちょっとドキドキするけど、そこがまたいい」
風俗ジャーナリストの尾谷幸憲氏によれば、個室ビデオ店は1980年代に登場、2000年代前半にかけて急速に発展したという。